2004年 12月 26日
ブラームス:交響曲全集/ビシュコフ指揮(SACD) |
ビシュコフ/ケルンWDR交響楽団によるAVIEレーベルへの録音は、マーラー3番、ショスタコーヴィチ7,8番、R.シュトラウス「英雄の生涯」に続いてこれで5組目。今回は初のSACDハイブリッドでのリリースとなっています。(ちなみに、ブラームスの交響曲第1番がSACDでリリースされるのはこれが初めて。)
どうもビシュコフという指揮者に関しては、「フィリップスにロシア音楽を録音してた人」という印象が強いせいか(また、その独特の風貌と相まってか)、濃厚な音楽作りをする人のような印象を勝手に抱いてしまっていましたが、一連のWDR響との録音を聴いていると、非常にバランスの取れた、時として洒脱ささえ感じさせる芸風の持ち主であることが分かります。オーケストラも、日本人にとって印象深かったベルティーニ時代と変わらない高水準を維持しており、実にいい音を聴かせてくれます。今のドイツのオーケストラの中では、ヤンソンス/バイエルンと並んで、最も安定感のある正統派コンビと言えるのではないでしょうか。
今回のブラームスもやはり正攻法で、聴いていて何ら物足りなさを感じさせない立派なものです。弦セクションは若干の野太さを持ちながらスーッと抜ける心地よさがあり、金管はホルンやトロンボーンの安定感が印象的。ただ、低音弦はさほど強奏させておらず、旋律の歌わせ方も柔らかめなため、いわゆる「ドイツ的」とは若干違った演奏(むしろ「ウィーン的」と言えるかもしれません)になっています。
基本的には「正統派の名演」なので、特筆すべきことは少ない(決して凡庸という意味ではない)のですが、第3番や第4番あたりでは、「もしかして、カルロス・クライバーみたいなキャラを狙ってる?」と言いたくなるような、ちょっとした「溜め」や、フッと力を抜くような瞬間が時々顔を出し、ビシュコフという人の意外な素顔をかいま見ることができます。第1番では、マーラーやショスタコーヴィチを演奏するときと共通するような剛直さが前に出ており、ホルンやティンパニの強奏が印象に残りました。また、各曲とも緩徐楽章で線が細くならず、円満な芳香で満たされているのも彼らの演奏の美点と言えると思います。なお、各曲とも繰り返しはすべて実行されています。
しかしながら、このような「正統派」の録音は、1980~90年代に比べるとなかなか見かけなくなってきましたね。メジャーレーベルの衰退もさることながら、大爆演ライブ録音かピリオド・アプローチでないと聴き手も目新しさを感じないという状況では、こうした堅実な演奏家が録音を続けるのはかなり困難なことなのでしょう。自分も、SACDハイブリッド盤でなければ買っていたかは正直微妙です。とはいえ、全曲を聴き終わってみると、「やっぱりブラームスっていいなあ」と素直に思え、愛着のもてる1組となりました。ビシュコフという名前を出さず、誰か過去の巨匠の名前を騙って聴かせたら、大絶賛する人もいそうな気がします。
録音は極めて優秀で、昔のフィリップスのトーンを思わせるものです。クレジットには「ライブ」の表記はなく、各曲とも録音日が数日に渡っていますので、演奏会のゲネプロなどと併せつつ、セッションを組んできちんと録音されたものなのでしょう。よくある「放送局の録音」ではない、メジャーレーベルと比較しても何ら遜色ない音に仕上がっています。
* AVIE/AV 2051(SACDハイブリッド盤3枚組/マルチチャンネル対応)
* ブラームス:交響曲全曲
* セミヨン・ビシュコフ指揮 ケルンWDR交響楽団
* 録音:2002年8月19~24日(第1番),2004年4月5~8日(第2番),2002年5月13~17日(第3番),2003年10月20~24日(第4番) ケルン、フィルハーモニー
どうもビシュコフという指揮者に関しては、「フィリップスにロシア音楽を録音してた人」という印象が強いせいか(また、その独特の風貌と相まってか)、濃厚な音楽作りをする人のような印象を勝手に抱いてしまっていましたが、一連のWDR響との録音を聴いていると、非常にバランスの取れた、時として洒脱ささえ感じさせる芸風の持ち主であることが分かります。オーケストラも、日本人にとって印象深かったベルティーニ時代と変わらない高水準を維持しており、実にいい音を聴かせてくれます。今のドイツのオーケストラの中では、ヤンソンス/バイエルンと並んで、最も安定感のある正統派コンビと言えるのではないでしょうか。
今回のブラームスもやはり正攻法で、聴いていて何ら物足りなさを感じさせない立派なものです。弦セクションは若干の野太さを持ちながらスーッと抜ける心地よさがあり、金管はホルンやトロンボーンの安定感が印象的。ただ、低音弦はさほど強奏させておらず、旋律の歌わせ方も柔らかめなため、いわゆる「ドイツ的」とは若干違った演奏(むしろ「ウィーン的」と言えるかもしれません)になっています。
基本的には「正統派の名演」なので、特筆すべきことは少ない(決して凡庸という意味ではない)のですが、第3番や第4番あたりでは、「もしかして、カルロス・クライバーみたいなキャラを狙ってる?」と言いたくなるような、ちょっとした「溜め」や、フッと力を抜くような瞬間が時々顔を出し、ビシュコフという人の意外な素顔をかいま見ることができます。第1番では、マーラーやショスタコーヴィチを演奏するときと共通するような剛直さが前に出ており、ホルンやティンパニの強奏が印象に残りました。また、各曲とも緩徐楽章で線が細くならず、円満な芳香で満たされているのも彼らの演奏の美点と言えると思います。なお、各曲とも繰り返しはすべて実行されています。
しかしながら、このような「正統派」の録音は、1980~90年代に比べるとなかなか見かけなくなってきましたね。メジャーレーベルの衰退もさることながら、大爆演ライブ録音かピリオド・アプローチでないと聴き手も目新しさを感じないという状況では、こうした堅実な演奏家が録音を続けるのはかなり困難なことなのでしょう。自分も、SACDハイブリッド盤でなければ買っていたかは正直微妙です。とはいえ、全曲を聴き終わってみると、「やっぱりブラームスっていいなあ」と素直に思え、愛着のもてる1組となりました。ビシュコフという名前を出さず、誰か過去の巨匠の名前を騙って聴かせたら、大絶賛する人もいそうな気がします。
録音は極めて優秀で、昔のフィリップスのトーンを思わせるものです。クレジットには「ライブ」の表記はなく、各曲とも録音日が数日に渡っていますので、演奏会のゲネプロなどと併せつつ、セッションを組んできちんと録音されたものなのでしょう。よくある「放送局の録音」ではない、メジャーレーベルと比較しても何ら遜色ない音に仕上がっています。
* AVIE/AV 2051(SACDハイブリッド盤3枚組/マルチチャンネル対応)
* ブラームス:交響曲全曲
* セミヨン・ビシュコフ指揮 ケルンWDR交響楽団
* 録音:2002年8月19~24日(第1番),2004年4月5~8日(第2番),2002年5月13~17日(第3番),2003年10月20~24日(第4番) ケルン、フィルハーモニー
by ucc3apde
| 2004-12-26 19:17
| SACD/DVD-Audio