2004年 10月 28日
ブルックナー:交響曲第8番他/ジュリーニBBCライブ |
BBC LEGENDSは相変わらず強力な新譜を次々と送り出してきます。2004年10月のリリースでは、何といってもテンシュテットのベートーヴェン第1&第5がダントツで話題になったようですけれど、ジュリーニ・ファンとしてはこちらも見逃せない1組です。
ジュリーニ指揮のブルックナー8番は、ウィーン・フィルと録音したDG盤がありますが、宇野功芳氏に「しかつめらしい」という難しい日本語でけなされてしまったせいか、ジュリーニ・ファン以外にはあまり一般受けはしていないようです。個人的には、各フレーズをすみずみまで見渡せる精緻なアンサンブル(特に後半2楽章)、巨大な響きなどの点で、ジュリーニ盤はこの曲のディスクの中でも上位におきたいと思っているのですが、確かに、スケルツォなどでやや重たく感じられる部分もないではありません。(ついでながら、DG盤に関して「音が硬い」という意見もあるようです。これは輸入盤の"MASTERS"シリーズではリマスタリングによっていくぶん改善されています。既に廃盤となっており、入手は困難なようですけれど…)
今回のBBC盤は、DG録音の1年前に行われたフィルハーモニアとのライブを収めたもの。ライブということもあって、DG盤で感じられた流れの悪さがかなり払拭されており、より自然な空気感をもってジュリーニのブルックナーを味わえます。基本的な解釈自体はDG盤と大差ないのですが、演奏時間が各楽章ともだいたい1~2分程度短く、自然な感興を伴ってスムーズに音楽が流れていく印象があります。アダージョの深さ、終楽章の燃え具合など(もちろん、ブルックナーの様式を破壊しない範囲内で)、ライブならではの良さも随所に感じられます。
オーケストラは、ウィーン・フィルのような音色的個性はないものの、いつもながらのフィルハーモニア水準で、ライブ一発録りとしては完璧に近いアンサンブルを聴かせてくれます。金管パートどうしのバランスでやや混濁がみられる箇所もありますが、まあ許容範囲でしょう。この曲において重要なティンパニが好演しているのも大きく、DG盤でのウィーン・フィルとは違った、少し乾いた音色で要所を引き締めています。(ちなみに、終楽章冒頭のティンパニ打ち込みでは、DG盤のようなクレッシェンドをかけていません。あれはウィーン・フィルの慣例なのでしょうか?カラヤンもウィーン・フィルとの共演時のみ採用していたようですし。)
録音については、80年代の放送録音としてはまあ水準レベル。今回、名エンジニアのトニー・フォークナーをリマスタリング・エンジニアとして迎えており、放送録音からのリマスタリングにありがちな強調感のない、それでいて自然な広がり感のある、いかにも彼らしい良識的な音作りがなされています。当シリーズのこの時期の録音の中では聴きやすい部類に入るでしょう。
併録も豪華で、ドヴォルザークの交響曲第8番と、ロッシーニの「セミラーミデ」序曲。ドヴォルザークは当時のBBCにしては優秀なステレオ録音で、壮年期のジュリーニの直線的な芸風を楽しめます。ただ、勢いはあるものの、細部の彫刻がこのコンビにしては甘く、むしろリラックスした雰囲気に支配されています。「集中」「凝縮」の方向に向かうことの多いジュリーニの指揮としては、やや異色の録音といえるでしょう。
* BBC LEGENDS/BBCL 4159-2(2枚組)
* ブルックナー:交響曲第8番 ハ長調(ノヴァーク版),ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88,ロッシーニ:「セミラーミデ」序曲
* カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
* 録音:1983年9月18日 ロンドン、ロイヤル・フェスティバル・ホール(ブルックナー),1963年8月8日 ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール(ドヴォルザーク),1963年11月25日 ロンドン、ロイヤル・フェスティバル・ホール(ロッシーニ)(いずれもライブ)
ジュリーニ指揮のブルックナー8番は、ウィーン・フィルと録音したDG盤がありますが、宇野功芳氏に「しかつめらしい」という難しい日本語でけなされてしまったせいか、ジュリーニ・ファン以外にはあまり一般受けはしていないようです。個人的には、各フレーズをすみずみまで見渡せる精緻なアンサンブル(特に後半2楽章)、巨大な響きなどの点で、ジュリーニ盤はこの曲のディスクの中でも上位におきたいと思っているのですが、確かに、スケルツォなどでやや重たく感じられる部分もないではありません。(ついでながら、DG盤に関して「音が硬い」という意見もあるようです。これは輸入盤の"MASTERS"シリーズではリマスタリングによっていくぶん改善されています。既に廃盤となっており、入手は困難なようですけれど…)
今回のBBC盤は、DG録音の1年前に行われたフィルハーモニアとのライブを収めたもの。ライブということもあって、DG盤で感じられた流れの悪さがかなり払拭されており、より自然な空気感をもってジュリーニのブルックナーを味わえます。基本的な解釈自体はDG盤と大差ないのですが、演奏時間が各楽章ともだいたい1~2分程度短く、自然な感興を伴ってスムーズに音楽が流れていく印象があります。アダージョの深さ、終楽章の燃え具合など(もちろん、ブルックナーの様式を破壊しない範囲内で)、ライブならではの良さも随所に感じられます。
オーケストラは、ウィーン・フィルのような音色的個性はないものの、いつもながらのフィルハーモニア水準で、ライブ一発録りとしては完璧に近いアンサンブルを聴かせてくれます。金管パートどうしのバランスでやや混濁がみられる箇所もありますが、まあ許容範囲でしょう。この曲において重要なティンパニが好演しているのも大きく、DG盤でのウィーン・フィルとは違った、少し乾いた音色で要所を引き締めています。(ちなみに、終楽章冒頭のティンパニ打ち込みでは、DG盤のようなクレッシェンドをかけていません。あれはウィーン・フィルの慣例なのでしょうか?カラヤンもウィーン・フィルとの共演時のみ採用していたようですし。)
録音については、80年代の放送録音としてはまあ水準レベル。今回、名エンジニアのトニー・フォークナーをリマスタリング・エンジニアとして迎えており、放送録音からのリマスタリングにありがちな強調感のない、それでいて自然な広がり感のある、いかにも彼らしい良識的な音作りがなされています。当シリーズのこの時期の録音の中では聴きやすい部類に入るでしょう。
併録も豪華で、ドヴォルザークの交響曲第8番と、ロッシーニの「セミラーミデ」序曲。ドヴォルザークは当時のBBCにしては優秀なステレオ録音で、壮年期のジュリーニの直線的な芸風を楽しめます。ただ、勢いはあるものの、細部の彫刻がこのコンビにしては甘く、むしろリラックスした雰囲気に支配されています。「集中」「凝縮」の方向に向かうことの多いジュリーニの指揮としては、やや異色の録音といえるでしょう。
* BBC LEGENDS/BBCL 4159-2(2枚組)
* ブルックナー:交響曲第8番 ハ長調(ノヴァーク版),ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88,ロッシーニ:「セミラーミデ」序曲
* カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
* 録音:1983年9月18日 ロンドン、ロイヤル・フェスティバル・ホール(ブルックナー),1963年8月8日 ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール(ドヴォルザーク),1963年11月25日 ロンドン、ロイヤル・フェスティバル・ホール(ロッシーニ)(いずれもライブ)
by ucc3apde
| 2004-10-28 20:03
| 交響曲/管弦楽曲/協奏曲