2004年 09月 07日
シャコンヌ(J.S.バッハ作品集)/曽根麻矢子(SACD) |
出産を機に、パリから日本に拠点を移した曽根麻矢子がエイベックスに移籍、J.S.バッハの主要鍵盤作品録音を開始することになりました。録音は、浜離宮朝日ホールで進行中の演奏会シリーズとの同時進行となるようですが、本盤は、それに先駆けての挨拶代わりの1枚、ということのようです。
「シャコンヌ」を除くと、演奏時間の短いポピュラーな曲ばかり、メヌエットAnh.114~6も収められ、収録時間は50分弱と、いかにも入門者向け的なプログラムですが、全曲を聴き終えてみると、意外と軽薄な印象は受けず、充実した手応えを感じることができました。ワーナー時代には感じられなかった恰幅の良さ、余裕、円満さのようなものが演奏に表れてきているからではないかと思います。
あとはやはり「シャコンヌ」が入っていることが大きいですね。この曲の存在がアルバム全体をびしっと引き締めています。チェンバロによるこの曲の演奏は珍しいとのことですが、装飾を抑えた禁欲的な編曲と演奏のおかげで、かなりストレートに楽曲の良さを感じることができます。アルペジオの使い方もさすがに堂に入っており、特に終結部の迫力は鬼気迫るものがありました。演奏時間は11分弱。ヴァイオリンだともう少しかかる場合が普通かと思いますが、さすがにチェンバロだとこのくらいのペースが自然に感じられます。
録音は、チェンバロ録音にしてはかなり楽器に接近したマイクセッティングのようで、楽器自体が発する物理的ノイズ、演奏者の息づかいなども聞こえ、ワーナー時代に比べて骨太な印象の音作りになっています。もちろんチェンバロ録音においてのタブーである、高域がささくれだったような音になることは避けられており、聴きやすい優秀録音に仕上がっていると思います。
…と言っても、もちろんこれはSACD層を聴いた場合の話。エイベックスお得意のパターンで、今回もSACD+CCCDのハイブリッド盤となっていますが、CCCD層は当然再生していませんので、レビューは不可能です。果たしてこのフォーマットで販売して、SACD再生環境を持っていない人がどの程度購入するのでしょう…? 制作サイドや営業サイドも、「会社全体の方針なのは分かるけど、クラシック部門くらいは普通のCDで出させてくれよ」というのが本音なのではないでしょうか。
また、エイベックスという企業自体がいつまで保つのか、クラシック部門は継続されるのか、という問題も(少なくとも現時点では)心配なところです。今回のバッハ録音プロジェクトは2010年まで続くとのことですが…。まあ、制作・録音スタッフは日本ビクターやキングなど、外部のスタッフで固められているようですので、何かあった場合は発売元を変えて継続されるものと思いますけれど…。
* avex-CLASSICS/AVCL-25017(SACDハイブリッド盤/ステレオ音声のみ/CD層はCCCD)
* J.S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 ハ長調 プレリュード BWV846,パストラーレ ヘ長調 BWV590より 第2曲,第3曲,コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(カンタータ BWV147より),フーガ ト短調「小フーガ」BWV578,アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳より,メヌエット ト長調 BWV Anh.114,メヌエット ト短調 BWV Anh115,メヌエット ト長調 BWV Anh.116,無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006より,プレリュード,ガヴォット・アン・ロンド,ジーグ,チェンバロ協奏曲第5番 ヘ短調 BWV1056 第2楽章 ラルゴ,コラール「目覚めよと呼ぶ声あり」(カンタータ BWV140より),無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004より シャコンヌ,ゴルトベルク変奏曲 ト長調 BWV988より アリア
* 曽根麻矢子(チェンバロ)
* 編曲:曽根麻矢子/石坂慶彦(BWV147,578,140,1004)
* 録音:2004年4月20~22日 東京、Hakuju Hall
「シャコンヌ」を除くと、演奏時間の短いポピュラーな曲ばかり、メヌエットAnh.114~6も収められ、収録時間は50分弱と、いかにも入門者向け的なプログラムですが、全曲を聴き終えてみると、意外と軽薄な印象は受けず、充実した手応えを感じることができました。ワーナー時代には感じられなかった恰幅の良さ、余裕、円満さのようなものが演奏に表れてきているからではないかと思います。
あとはやはり「シャコンヌ」が入っていることが大きいですね。この曲の存在がアルバム全体をびしっと引き締めています。チェンバロによるこの曲の演奏は珍しいとのことですが、装飾を抑えた禁欲的な編曲と演奏のおかげで、かなりストレートに楽曲の良さを感じることができます。アルペジオの使い方もさすがに堂に入っており、特に終結部の迫力は鬼気迫るものがありました。演奏時間は11分弱。ヴァイオリンだともう少しかかる場合が普通かと思いますが、さすがにチェンバロだとこのくらいのペースが自然に感じられます。
録音は、チェンバロ録音にしてはかなり楽器に接近したマイクセッティングのようで、楽器自体が発する物理的ノイズ、演奏者の息づかいなども聞こえ、ワーナー時代に比べて骨太な印象の音作りになっています。もちろんチェンバロ録音においてのタブーである、高域がささくれだったような音になることは避けられており、聴きやすい優秀録音に仕上がっていると思います。
…と言っても、もちろんこれはSACD層を聴いた場合の話。エイベックスお得意のパターンで、今回もSACD+CCCDのハイブリッド盤となっていますが、CCCD層は当然再生していませんので、レビューは不可能です。果たしてこのフォーマットで販売して、SACD再生環境を持っていない人がどの程度購入するのでしょう…? 制作サイドや営業サイドも、「会社全体の方針なのは分かるけど、クラシック部門くらいは普通のCDで出させてくれよ」というのが本音なのではないでしょうか。
また、エイベックスという企業自体がいつまで保つのか、クラシック部門は継続されるのか、という問題も(少なくとも現時点では)心配なところです。今回のバッハ録音プロジェクトは2010年まで続くとのことですが…。まあ、制作・録音スタッフは日本ビクターやキングなど、外部のスタッフで固められているようですので、何かあった場合は発売元を変えて継続されるものと思いますけれど…。
* avex-CLASSICS/AVCL-25017(SACDハイブリッド盤/ステレオ音声のみ/CD層はCCCD)
* J.S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 ハ長調 プレリュード BWV846,パストラーレ ヘ長調 BWV590より 第2曲,第3曲,コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(カンタータ BWV147より),フーガ ト短調「小フーガ」BWV578,アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳より,メヌエット ト長調 BWV Anh.114,メヌエット ト短調 BWV Anh115,メヌエット ト長調 BWV Anh.116,無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006より,プレリュード,ガヴォット・アン・ロンド,ジーグ,チェンバロ協奏曲第5番 ヘ短調 BWV1056 第2楽章 ラルゴ,コラール「目覚めよと呼ぶ声あり」(カンタータ BWV140より),無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004より シャコンヌ,ゴルトベルク変奏曲 ト長調 BWV988より アリア
* 曽根麻矢子(チェンバロ)
* 編曲:曽根麻矢子/石坂慶彦(BWV147,578,140,1004)
* 録音:2004年4月20~22日 東京、Hakuju Hall
by ucc3apde
| 2004-09-07 08:13
| SACD/DVD-Audio